2016年、当時29歳の時に実家の酒蔵で杜氏として酒を造り始め、まず目標としたのが「再現性のある酒を造ること」。
”酒造りは毎年1年生”という言葉があるように、環境や原料米の状態が毎年異なる日本酒造りにおいて、安定した味わいに仕上げること=技術力に直結します。
まずは品質の安定を目指して、努力して参りました。
もうひとつ立てた目標は、「月吉野(つきよしの)を輸出すること」。
もともと北米、アジア地域が好きで、学生時代は旅行をたくさんしていました。
夫はバスケットボールが好きでよくNBAを見ていますし、私も米文化が好きで、大学での専攻は英米文学でした。
そういう自分達の好きなことと、仕事が重なるようなことがあれば嬉しいなと思ったのと、自分の造った酒を飲んだ外国の人の反応を見てみたかったこともあり、35歳までに輸出することを目標にしました。
そのうち造る酒の種類が増え、幸運なことに輸出が始まり、国内で私達の酒を取り扱ってくださる酒屋さんも増えてきました。
そうなると、より高品質な酒を求められるようになります。
もう1段階ステップアップするには、他者からの評価や指摘が必要だなと感じ、「品評会で賞をとること」を40歳までに達成するべき目標にしました。
初めて出品をした令和3酒造年度(2022年春)の全国新酒鑑評会では、結果は入賞。
「この造り方をベースに、改善していけば金賞に手が届くかもしれない」と思いました。
「品評会で賞をとること」
2024年冬に仕込んだお酒で、念願の「金賞」を受賞することが叶いました。
賞状をやっともらいました✌️
全国新酒鑑評会という、明治44年から続く歴史のある鑑評会です。
色々目標を立てては達成するべく努力してきましたが、この賞をとったことで、自分の中ではひとつの区切りとなりました。
こちらのお酒は現在絶賛販売中です。
オンラインショップでは720mlのみのご案内となりますが、店頭では720mlと300mlがございますので、是非一度飲んでくださいませ。
最後に、初心を忘れない為に、2015年に酒業界のメディアに掲載された文章を残しておきます。
”はじめまして。「月吉野」醸造元、若林醸造の若林真実と申します。当蔵は明治29年に創業し、長野県上田市・塩田平というところにあります。上田電鉄別所線沿線に位置し、4キロ先には信州の鎌倉・別所温泉という硫黄泉があります。寺社仏閣の多さや、豊富にとれる松茸を目当てに観光客が訪れます。
私は現在、酒造りに携わって3年目になります。親の代で終わるのはもったいないと、3年前に勤めていた会社を辞め東京から実家へ戻り、その年の冬から同じ上田にある信州銘醸さんの蔵へ酒造りの勉強に行き始めました。醸造関係の学校を出ておらず、酒造りの様子も見たことがなかったため、ゼロからのスタート。膨大な量の仕込みを毎日1つ1つこなしていくので、ついていくことで精いっぱいでした。そんな中、全体の動きを把握し、朝晩問わずに淡々と仕事を行う杜氏さんの姿を見て、その姿に憧れ、自分で造ってみたいと思うようになりました。職人技という言葉がありますが、杜氏さんの仕事ぶりはまさにそれでした。
いくら勉強しても、傍から酒造りを見ていても、自分でやってみなければ覚えることができない。そう思い、昨年初めて自分で1本仕込んでみました。経験も知識もない私が1本酒を造ることができたのは、同じ上田の他の酒蔵の方々が助けてくださったおかげです。正直に相談できる仲間・先輩がいたことで、仕込みから火入れまでなんとか終えることができました。夏を越え熟成されたそのお酒は、評価してくれる方と出会うことができ、初めて東京の飲食店に置いてもらえるようになりました。
これまで当社のお酒は別所温泉内、もしくは上田市内でしか流通しておりませんでしたので、月吉野を知っている人はほんのわずかだと思います。まだまだ未熟ですが、技術を蓄えより良い味を造れるよう、そして杜氏と名乗れるようがんばります。”